中村明裕
中村明裕

@nakamurakihiro

13 تغريدة 321 قراءة Sep 26, 2023
こちらのツイートがバズっていますが、この内容には問題があると思うので、以下、スレッドにて指摘しておきたいと思います。
(1)まず、「プディパラのプピティォ」という発音は根拠が薄弱です。
奈良時代には、平安時代以降では o と発音される母音に2種類がありました。この2種類は甲類、乙類と呼んで区別されます。「藤原の」の「ノ」と「不比等」の「ト」はいずれも乙類ですから、「の」「ティォ」と区別されるのはおかしいです。
特に問題なのは「ティォ」で、乙類の「ト」が「ティォ」という音であったという説は聞いたことがありませんし、少なくとも一般的ではありません。o の乙類は、発音記号で書けば [ə] に近い音であったという説が、有力な説のうちの一つです。
その他、当時の「ヂ」の前には前鼻音(「ン」のような発音が少し入る)があったと考えられているなどの問題もありますが、小さな問題なので特に取り上げるまでもないでしょう。
(2)問題は、単に「プディパラのプピティォ」が一般的な再構音(再現された昔の発音のこと)と遠い、という点にあるのではありません。面白さを優先して、いいかげんな発音をでっちあげているという点にあります。
少しでもまともに日本語学に触れていれば、そして、古い時代の日本語が多くの証拠に基づいて多くの学者の研鑽の積み上げの上に推定されていることを知っていれば、根拠薄弱な音をでっちあげようとは思わないでしょう。この点が言語に対する科学への軽視であり、冒涜なのです。
なお、著者の山口氏は他の本では「ぷぴちょ」としているそうです。また、この「ぷぴちょ」という発音は有名なYouTuber「ゆる言語学ラジオ」によって無批判に取り上げられ、有名になってしまいました。
科学の真の魅力というものは、「不比等はプピチョだった」のようなウケ狙いの帰結や、こういうウケ狙いの帰結を伝言ゲームすることにではなく、結論に至るまでの地道な積み重ねや、精緻な道筋にあるものだと私は信じます。
事実、この本の著者の山口氏は日本語学の専門家ではありません。専門は中国文献学であるようです。
そして山口氏は書籍の中で日本語学に関する不正確な記述を繰り返しており、日本語学者の矢田勉氏が2020年に『日本語の研究』誌上で発表した「日本語学会の社会的役割と『日本語学大辞典』」の中で厳しく批判されています。
(3)確かに医学や疫学の専門知に比べて、日本語学は誤情報が出回ったところで致命的ではありません。「ぷぴちょ」が出回ったところでそれを聞いた人の生存率が変わったりはしません。
人が死ぬような誤情報が氾濫する中で、この程度の「ネタ」一つを取り上げて批判するのは暇人の物好きと思われるかもしれません。しかしながら、全ての科学はどこかでつながっているのであり、あらゆる分野の知見を尊重することが必要なのではないでしょうか。
(終わり)

جاري تحميل الاقتراحات...