上村朔之助
上村朔之助

@taikichiro

10 تغريدة 5 قراءة Apr 19, 2023
皆が夢中だった。インコメットは子供たちの間で熱狂的なブームとなり、社会現象を巻き起こした。
インコメットは小鳥遊商会が展開した、インコをモチーフにしたヘルメットで、かぶると様々なインコに変身できるというコンセプトだった。
私も他の子と同じくインコメットが欲しくて仕方がなかった。しかし、親には反対された。安全性が心配だというのが理由だった。小遣いを貯めてやっと手に入れた。赤と黄色のシンプルなデザインで私にとって宝物だった。
私がインコメットを手に入れたときには、ブームは去っていた。子供たちはみな、エアロタイプの新しいヘルメットをかぶっていた。私には冷たくて無機質で、個性がないように感じられた。私はインコメットをかぶり続けた。
ヘルメットというものは、頭部を守るための単なる安全装備ではない。自分の個性や価値観、さらに言えば思想を具現化するものだ。インコメットは私の内面を映し出す。脳を拡張させる装置であり、私の身体の一部である。
この世界にはインコメットを愛する者がほとんどいなくなった。時代は移り変わり、人々の感性も変化していく。しかし、私にとってインコメットは永遠に変わらない存在だ。
不変であるがゆえに孤独であることを私は悟っている。私はインコメットをかぶることで、自分のアイデンティティを確立してきた。それは同時に自分を周囲から孤立させることでもあった。私は自らの意志で孤独を招いてきたのかもしれない。
それでも私はかぶり続けるだろう。インコメットに助けられてきた。癒やされてきた。支えられてきた。つらいとき、苦しいとき、いつもそばにはインコメットがいた。
私は今年還暦を迎える。今でも毎日の通勤でインコメットをかぶっている。奇異な目で見られることもあるが、気に留めない。これまでの半生でこんなにも親しくしてくれたのは彼女たち以外にいない。今も隣でぐっすりと眠っている。朝が弱い彼女を起こすのは私の日課である。

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